越境EC×CRM最前線 “買いたい”を
引き出す階段設計とLTV最大化戦略
公開日:2025年06月30日
更新日:2025年06月30日

こんにちは!世界へボカンの徳田です。
これまで越境EC・海外Webマーケティングを18年ほど支援し、月商40万円の抹茶販売越境ECサイトを5000万円まで導いたり、年商34億円の中古車越境ECを1000億円までに伸ばす等、数多くの実績を残してきております。
前回は、自社越境ECで売り上げアップにつながる決済戦略・最適解とは?というお題で決済周りの記事を執筆させて頂きましたが、今回は、CRMを活用して自社越境ECの売上を伸ばす方法についてお伝えしていきます。
まず前提のお話ですが越境ECは国内ECと比べ、購入のハードルがとても高く、「わざわざ日本のサイトから購入する理由」がある場合のみ売れます。そのため、世界の平均成約率が1.83~1.91%(※1)と言われてますが、私たちは越境ECの成約率を1%が基準値とみています。
最初から越境ECでこの基準値を上回るケースは稀です。最初は、0.3%くらいからスタートして徐々にブランド認知が向上したり、越境ECを最適化していく中で0.5%、0.7%、1%と成約率が伸びていきます。このときに最も効果的な施策がCRMと決済周りの改善です。

今回は、CRM施策で成約率を改善する施策を解説していきたいと思います。
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[目次]
CRM施策とは
顧客との関係を強化・維持・発展させるための具体的な取り組みを指します。CRMは「Customer Relationship Management(顧客関係管理)」の略で、顧客を理解し、最適なタイミングで最適なコミュニケーションやサービスを提供する仕組みのことです。今回、ご紹介するメールマーケティングの他にユーザーレビューへの対応も含みます。
特に獲得コストが国内よりも高い海外顧客に対しては1回限りの購入で終わらせず、継続的な関係構築をするためにCRM施策は重要な施策になります。
1.鉄板施策の階段設計
私たちが最も推奨するCRM施策が階段設計です。階段設計とは読んで字の如く、商品を購入するまでのステップを用意してあげる設計です。通常、ECサイトでは、サイトに訪れたら商品を購入する or しないかの2択しかありません。
しかし、越境ECでユーザーが初回訪問で購入する確率はとても低く、基準値を1%としているように99%のユーザーが買わずに何らかの理由で離脱してしまいます。せっかく、海外から商品に興味を持ってあなたのサイトに訪れてきたユーザーをみすみす逃す手はありません。
そこで購入の手前に会員登録のオファーを実施し、まずは中長期に顧客接点が持てる状態を作れる階段設計が効果的な施策になります。階段設計を一つとってもチューニングポイントが3つほどありますので解説していきたいと思います。

1-1.どのタイミングでポップアップオファーを表示させるのか?
まず、階段設計で最も重要なポイントの一つが、どのタイミングでポップアップオファーを表示させるのかということです。タイミングというのは、①サイトに訪れてすぐ、②サイト訪問から〇秒後、③特定のページに遷移したタイミングというように分類し、自社でテストをしてみました。
すると、③の商品詳細ページに遷移したタイミングにポップアップオファーを表示させたときが最も会員登録率が高かったです。
①のサイトに訪れたタイミングが最も表示するユーザーの母数は多くなるのですが、まだ商品を欲しいと思ってくれていないため、会員登録率が低く、逆に③商品詳細ページに遷移したタイミングでポップアップオファーを表示させたほうが表示母数は少なくなりますが、会員登録率が高まり、結果、購買に引き上がり易く効果的なタイミングでした。
1-2.ポップアップではどういった情報を取得するか?
また、もしあなたが複数のブランドを一つのサイトで展開しているときは、訪れたユーザーがどのブランドに興味がある人なのかをポップアップオファーのチェックリストで確認するようにしましょう。リストの獲得の仕方、その後のメーリングリストに応じた配信メールの出し分けをすることは、リストの反応を最大化するための秘訣です。

1-3.会員登録を促すために何をオファーすると効果的なのか?
会員登録を促すためのオファーは、①情報、②割引、③ノベルティ等があります。ブランドのロイヤリティが高いユーザーが多く、商品やブランドの情報のアップデートすらもチェックしたいというユーザーがいれば、①情報をフックにオファーをしてもよいでしょう。
初回購入のみ10%オフ等の②割引オファーの方が会員登録のフックとしては強いです。この場合は、カートの管理画面上で初回のみ使用できるクーポンを発行するだけなので運用上の手間もそこまでかかりません。ただ、割引等を好まないブランドの場合は要検討です。
③のノベルティは、「今、新規会員登録して〇〇円以上買うとノベルティプレゼント」というオファーなのですが、ブランドを認知しているものの未購買の顧客が多くいる場合の購入するきっかけとして効果的です。また、モールや他社サイトで購入されてしまっているときに「公式サイトから購入する理由」として効果的ですが、ノベルティはコストや手間がかかります。
2.購買行動に合わせたCRM施策で顧客満足度を向上させる
CRM施策は購入前の「買いたいなと思ってもらうための情報」を提供するだけでなく、「購入して良かったなと思ってもらうための情報」を提供することで顧客のLTVを最大化することが可能です。それぞれを解説していきましょう。
2-1.購入したいなと思ってもらうためのCRM施策
前述の初回購入時に会員登録をしてもらったユーザーには、初回購入のオファー以外に、①ブランドが信頼を得るためのストーリー、②選び方ガイド、③これまで購入した方のレビュー、④商品の活用事例等、購買意欲を高めたり、信頼獲得、不安を払拭するための情報を提供します。
少しドライな表現ですが、「どういった情報が購買のトリガーになるか?」「どういった情報に触れたら人は商品を購入したくなるのか?」という視点で情報を設計することで購買率を高めることが可能です。
購入前に購買意欲を高めるコンテンツの代表例は選び方ガイドがあります。選び方ガイドは用途や目的に最適な製品をおすすめすることで商品と顧客の願望、目的を繋ぐコンテンツです。
岡山デニム越境EC成功事例
デニムの履き込むことによって自分ならではの経年変化(色落ち)が楽しめる岡山発世界のデニムブランドThe Strike Gold(※2)は、デニムのタイプによって経年変化の仕方が異なります。
どういった経年変化がどのデニムを履き込むことで実現できるか分からないお客様のために「理想の経年変化を実現するためのデニムの選び方」コンテンツが用意されており、これがお客様の「購入したいなと思う気持ち」を後押しをしています。
デニムの購入を検討しており、会員登録したものの選べずに離脱してしまったユーザーにこういったコンテンツはとても刺さり、購買に繋がりました。

2-2. 購入して良かったなと思ってもらうためのCRM施策
購入完了後のCRM施策はLTV最大化のために効果的な施策です。顧客満足度を最大化させるファーストステップは「正しく商品を使用してもらうこと」です。
作り手や販売している身としてはそんなのあたりまえでしょ!と思われるかもしれませんが、日本の製品を正しく使用できているかどうかは私たちには確認ができません。
誤った使い方をしてしまって商品のスペックを発揮できずに不満に感じさせてしまう可能性もあります。その時に重要なのが使い方ガイドコンテンツです。
金物の街、新潟県燕三条にある角利産業株式会社様は越境ECを通してノコギリ、カンナを世界に輸出し続けています。日本製のノコギリと西洋ノコギリでは刃の形状と使用方法が異なります。日本のノコギリは引いて切る刃の形状をしており、軽く力を入れて滑らかに切れる設計です。一方、欧米のノコギリは押して切る形状で、強い力で押し切るように設計されています。
こういった違いや使い方をはじめて日本製のノコギリ、カンナに触れる方に向けてStep-by-Step Product Guides(※3) コンテンツを用意し、購入後の顧客に送っています。

3.基準値をベースにCRM施策の改善を行う
CRMに取り組むうえで重要なのが基準値をもって分析し、改善を行っていくことです。MailChimpが業界別の開封率、クリック率、登録解除率の基準値(※4) を公開していますが、私たちがメールマーケティング施策を行う際はこれらの数値を用い、PDCAを回しています。
それぞれの基準値を下回っていた場合、どのように改善施策を行ってるのかを解説していきます。

3-1.開封率の改善
開封率が低い場合は、配信リストの絞り込みに改善の余地がある場合とタイトルに改善の余地がある場合があります。配信リストは全体ではなく、必ずユーザーの興味関心に合わせて配信リストを分けて配信するようにしましょう。
また、配信リストが多い場合は同じ配信リストをタイトルを分けて配信し、どういった配信タイトルがリストの読者に好まれるかをテストしていきましょう。
なお、メールを配信しても開封しなかったユーザー向けに48時間後にリメール(メールの再送信)をするようにしましょう。数多くあるメールを受信するなかで配信時には気付かなかったものの、リメールで気付いて開封してくれるユーザーは少なくありません。
3-2.クリック率の改善
メール開封後のクリック率の改善施策でできることは大きく分けて3つ
① タイトルとメールの内容のマッチ度を上げる
タイトルとメールの内容にミスマッチがあるとクリック率が低下するほか、次回以降の開封率も下がってしまいます。開封率を意識し過ぎてミスマッチが発生するのを防ぎましょう。
② CTAボタンを上部に持ってくる
メールを開封したユーザーがそのメールを読み続けるかどうかを判断するのにかかる時間は7秒以内と言われています。7秒以内に読める文字数は日本語で70~90文字(アルファベットでいうと21~28語)なので、できるだけ上部にCTAボタンを用意し、クリックを促しましょう。
※CTAボタン
Call To Actionボタンの略
WebサイトやWeb広告内でユーザーに具体的な行動(例:商品購入、資料請求、お問い合わせ等)を促すために設置されるボタンのこと
③ 登録解除率を改善するには?
登録解除率を改善するには、セリングとコンテンツを出し分けることです。毎日、セリング(売込み)メールばかり送られてきては、ブランドとの結びつきは弱くなってしまうでしょう。顧客との結びつきをを保つためにも上記でご紹介したような使い方ガイドやケアガイド、活用事例等のコンテンツを提供するようにしましょう。